ハラスメントとは「いじめ」「嫌がらせ」と訳される言葉です。 人格に関する言動などによって、相手を傷つけることを言います。
相手に対する言動が意図的だったかどうかは関係ありません。
職場でのハラスメントは、職場上の立場や優位性を利用して「嫌がらせ」をすることです。
現在では、『パワハラ』『セクハラ』『マタハラ』をはじめとする職場でのハラスメントの種類は、30種類以上あるといわれており、なかには「こんなことまで?」と思うものも少なくありません。
この記事では、職場でのハラスメントの代表的なパワーハラスメント『パワハラ』とは、
どんな行為か?
パワハラを受けたときにはどう対処すればいいか?
についてまとめました。
- パワハラとは、職場において優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて労働者の就業環境を害するものである。
- パワハラには、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害などの6類型がある。
- パワハラ防止法は、2020年6月に大企業、2022年4月に中小企業にも施行され、事業主にパワハラ防止に関する4つの義務が課せられた。
- パワハラ被害にあった場合は、証拠を残し、会社内外の相談窓口や弁護士に相談し、必要に応じて転職や退職を検討する。
職場のパワーハラスメントとはどんな行為
職場のパワーハラスメントとは、厚生労働省によると以下のように定義づけられています。
職場において行われる
① 優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの3つの要素を全て満たすもの。
ただし、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。」となっています。
「必要かつ相当な範囲」を越えなければ、パワハラには該当しないことになりますが、あいまいで客観的な判断をするのは難しい事例もあるのではないかと思います。
また、パワハラは「上司が部下」に行う嫌がらせやいじめなどというイメージがありますが、職場でのあらゆる関係で考えられます。
例えば、部下から上司,先輩から後輩,同僚同士などでも、経験や知識、性格などに基づく優越的な関係があれば該当します。
厚生労働省が示す6類型のパワハラ行為
具体的に、どのような行為がパワハラにあたるのかについて、厚生労働省が6つの類型を示しています。
1.身体的な攻撃 | 蹴ったり、殴ったり、体に危害を加えるパワハラ |
2.精神的な攻撃 | 脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など精神的な攻撃を加えるパワハラ |
3.人間関係からの切り離し | 隔離や仲間はずれ、無視など個人を疎外するパワハラ |
4.過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや遂行不可能な業務を押し付けるパワハラ |
5.過小な要求 | 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えないパワハラ |
6.個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入るパワハラ |
- 身体的な攻撃
被害者に対して暴行を加える行為をいいます。
殴る,叩く,足蹴りにするなど、直接体に暴行を加える行為なので分かりやすいと思いますが、物を投げたり、物で叩いたりといった、直接体にふれていない行為も該当します。 - 精神的な攻撃
脅したり、人格を傷つける言動を行ったりすることで、精神的な損害を与える行為をいいます。言動だけでなく、メールなどによる攻撃も含まれます。 - 人間関係からの切り離し
業務上合理的な理由がないにもかかわらず、相手を職場の人間関係から切り離そうとする行為をいいます。
集団で無視したり仲間はずれにする状態や、仕事から外したり、別室への隔離し孤立させた状態に追い込む行為です。 - 過大な要求
ひとりの能力では到底対応できない困難な業務や、明らかに不要な業務を強制することをいいます。
仕事を妨害する行為や、業務とはまったく関係のない私的な仕事を押し付けることなどもこれにあたります。 - 過小な要求
能力に見合った業務を与えず、やりがいを奪ったり、間接的に退職を促したりする行為をいいます。
管理職であるにも関わらず、誰にでも遂行可能な業務を命じられたり、まったく仕事を与えてもらえず、一日中ぼんやりと時間が過ぎるのを待っているなどに追い込む行為です。 - 個の侵害
プライベートな事柄について、過度に干渉する行為をいいます。職場外でも継続的に監視したり、デスクに置いておいたスマホを勝手に見るなどの行為。また、上司との面談等で話した個人情報について、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露する行為など。
厚生労働省が示す類型があったとしても「業務の適正な範囲を超えているか」を、各職場で明確にすることになっているので、パワハラが認定されるかどうかは、会社の判断になります。
また、事実についても証明する必要が出てくるでしょう。
パワハラ防止法が施行され中小企業も義務化対象に
パワハラ防止法(労働施策総合推進法)は、大企業を対象に2020年6月1日に施行されました。2022年4月1日からは、中小企業も対象になりました。
どの企業もパワハラ防止に関する義務が課せられたことになります。
具体的に事業主に課せられた義務は、以下の4項目です。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
パワハラの内容及びパワハラを行ってはならない方針を明確化し、パワハラを行った者について、厳正に対処する方針及び内容を就業規則等に規定し、周知・啓発する。 - 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口と担当者を定め周知し、担当者が適切に対応できるようにする。 - 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
パワハラの相談があった場合、事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処を講じる。 - 1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置
パワハラ相談者・行為者等の情報はプライバシーを保護する措置を講じ周知する。また、パワハラに関し相談をしたことを理由として、解雇等不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発する。
パワハラ被害にあった場合の対処法
パワハラの被害を受けた場合は、どのように対処すべきなのでしょうか。
パワハラの証拠を残す
まずは、パワハラの事実について、いつ,どこで,どんなことをされたかの記録を残しましょう。
過去のこともできるだけ、記憶をたどってメモを作成しましょう。
メールは、削除されないようにバックアップするかプリントをして保存しましょう。
第三者に相談する場合には、どのような被害をどの程度受けたのか、客観的な事実が必要です。
パワハラを受けた期間、場所、相手の言動、周囲で見ていた人なども、記録に残すようにしましょう。
スマホなどで発言を録音したり、映像を録画したりすることができれば、非常に有効です。
会社内のハラスメント相談窓口に相談する
社内のハラスメント相談窓口や人事部などにパワハラの事実を相談してみましょう。
上司や同僚にパワハラの被害を相談するのは避けましょう。
信頼している上司でも、必ずしも協力してくれるとは限りません。
私がパワハラで悩んでいることは、一番最初に上司に相談しましたが、見事に裏切られました。
その上司のことは、仕事も長く一緒にしていて絶対的な信頼を置いていましたが、もめごとに巻き込まれたくないらしく、とにかく「穏便に済ませてくれ」に一点張りでうやむやにされてしまいました。
同僚についても、周りに言いふらされるだけなので、相談するのはやめたほうがいいでしょう。
いろいろな人に相談すると、そのことがパワハラの行為者の耳に入り報復などの二次被害を受ける可能性があります。
相談先は、慎重に選ぶことが大切です。
会社外の第三者機関や弁護士に相談する
社内のハラスメント相談窓口や人事部などに相談しても改善が見込めなかったり、二次被害を受けているなど、深刻な事態に陥っている場合は、第三者機関や弁護士に相談することも有効です。
外部機関としては、労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」や、最寄りの法務局や地方法務局に電話が繋がる「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)などがあります。
転職先を探し退職を検討する
パワハラ問題に巻き込まれると、問題が解決するまで精神的に追い込まれてしまうことが多く、パワハラの行為者や会社と関わりたくなくなります。
解決したとしても、居心地がよくなるとは限らないので、改善しない場合は、退職や転職を検討するべきです。
心の病にもつながりかねない状況に陥る場合がありますので、決して無理をしないようにしましょう。
事情があり退職を申し出ることが難しい場合には、「退職代行サービス」の利用を検討してみましょう。退職手続きを弁護士などの第三者が代行してくれます。
まとめ
- パワハラとは、職場において優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて労働者の就業環境を害するものである。
- パワハラには、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害などの6類型がある。
- パワハラ防止法は、2020年6月に大企業、2022年4月に中小企業にも施行され、事業主にパワハラ防止に関する4つの義務が課せられた。
- パワハラ被害にあった場合は、証拠を残し、会社内外の相談窓口や弁護士に相談し、必要に応じて転職や退職を検討する。
職場のパワハラについて、解説してきました。
パワハラは被害者になるのもつらいですが、気が付かないうちに行為者になっている場合もあるかもしれないので、どちらにもならないために職場ではコミュニケーションをしっかりと取りたいものです。
また、一度崩れた人間関係をもとに戻すのは容易ではありません。
対応によっては、会社への不信感も募ってしまうかもしれません。
そうなると、思い切って転職や退職を選択する場合もあると思います。
退職して転職する場合は、転職サイトを利用するのが効率的です。
あらかじめ登録し準備することをお勧めします。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
少しでも転職で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
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